相続財産の名義変更等の手続き(その1)
遺産分割協議が成立したら
無事、遺産分割協議書も完成しました。でも未だ終わりではありません。最終的に遺産分割協議書通りの相続を完了させるためには、相続した財産の名義を変更する手続きが必要です。現金・預金以外の財産は、ともすると手続きが遅れがちです。不動産などはずっと相続登記をしていなくて、名義が曾祖父のままだった、なんて話もあります。そこまで放置しなくても、相続登記を先延ばししているうちに、他の相続人の債権者が持分移転登記をしてしまうこともあります(こちら)。トラブルを避けるためにも不動産等の名義変更手続きは速やかに行ってください。以下に主なものを説明いたします。
現金
タンス預金など、故人が自宅金庫等に置いていた現金は、遺産分割の通りに分けるだけです。ただし漫然と分けるのではなく、それまで管理していた代表相続人等に対して領収書を交付するようにしましょう。代表相続人等だった人は現金管理簿(作っておいてください)と領収書を遺産分割協議書と一緒に保管します。
預貯金
預貯金の名義変更では、実は遺産分割協議書は必要ありません(いえ、あればあったで良いんですけど)。遺産分割協議の準備のところでも述べましたが、ほとんどの銀行では
- 専用の所定用紙(相続届とか払戻依頼書とか名前もまちまちです)を用意しており、
- それに法定相続人全員の署名捺印があれば良い
のです。その他に必要な添付書類は
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 通帳
といったところです。なので、印鑑証明書や戸籍謄本が揃っていて、銀行の所定用紙に全員が署名捺印できれば、遺産分割協議書の完成を待つことなく名義変更や払戻ができます。預金口座の相続について合意できている場合などは、早めに手続きすると良いでしょう。
不動産(所有権)
不動産の所有権を相続した場合は、管轄の法務局に相続登記を申請します(相続を原因とする所有権移転登記)。
遺産分割協議書には印鑑証明書が添付されているので、銀行の手続きで使った一連の戸籍謄本類と、自分の住民票があれば登記申請できます。権利証(または登記識別情報)は使いません(ただし大切に保管しておきます)。
法定相続分などで一度相続登記を済ませている場合
ときどき、遺産分割前に法定相続分で相続登記を済ませている場合があります。そうすると登記申請のやり方が少し変わってきます。この場合、不動産は自分も含めた相続人全員の共有名義になっています(一人ひとりに「登記識別情報」が発行されています)ので、他の人の持分全部を自分に移転することになります。先ほどの例では使わなかった権利証=登記識別情報も登記申請に必要になり、また、印鑑証明書も発行後3ヶ月以内のものが必要になります(遺産分割協議書に添付してある印鑑証明書を流用できますが、日付に注意が必要です)。
農地・森林を相続する場合
売買の場合と異なり、農地法所定の許可証は必要ありません。ただし地元の農業委員会への届出が必要です。同様に、森林を相続した場合は市町村に届出が必要です(平成24年4月から改正法施行)。罰則もあるので、必ず届け出るようにしてください。
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