具体的な相続内容を協議する−遺産分割協議−(その2)
相続人に未成年の子や胎児がいるときは
法定相続割合は未成年者も成年者と変わりありません。また、胎児は相続においては既に生まれたものとみなされます。しかし未成年の子や胎児には財産的な話し合いに参加する法律上の能力が認められていないので代理人を選任しなければなりません。通常は親が法定代理人なのですが、親と子が同じ相続人という立場にある場合は利益相反となり代理人になれません。そのため家庭裁判所に特別代理人の選任を請求することになります。
特別代理人選任の実際
「べつに子供の相続分を着服しようなんて考えていないのに仰々しいなぁ」と思うこともあるでしょうが、実際は子の利益を害さないような内容の遺産分割案さえ出来ていれば、相続人でない伯父などを特別代理人の候補者にし、遺産分割案を添えて家庭裁判所に請求します。家裁が子の利益を害さない内容であると認めれば、あとは特に協議をすることもなく叔父が代理人としてサインするだけです。ただし家裁に認められない場合は、きちんと特別代理人をたてて協議することになります。
胎児の場合は出生を待つのが確実
ちなみに胎児の場合も同様にして遺産分割する事ができ、胎児が生まれてくるまでは財産を法務局に供託することもできますが、万一無事生まれることが叶わなかった場合は遺産分割協議もやり直さなければなりません。そのため胎児の場合は、特に事情がなければ出生を待って遺産分割するほうが確実です。同じように未成年の場合も、成年になるのを待ってから遺産分割する方法もあります。
遺産分割協議の進め方
相続税がかかる場合で少なくとも24件に1件、相続税がかからない場合でも178件に1件は裁判所の調停に持ち込まれる遺産分割。また、調停にこそ至らないものの何らかの理由で相続放棄する人は7件に1人存在し、遺産分割でもめるリスクは想像以上に高いのです。
しかし人と人との話し合いですから、会社や地域での会議と同じで準備次第、進め方次第で無用な混乱を避けることができるはずです。一般的に次のような点を意識して事前に段取りを組んでおきます。
事前の準備 | 日時・会場の設定、協議後の手続きを速やかに行うため全員に実印と印鑑証明書(作成3ヶ月の期限があるので最新のもの)を持参してもらう、銀行口座の手続きに必要な専用用紙を入手しておき協議後すぐに署名押印できるようにする、法定相続分に近い分割案の用意、各相続人に希望財産の優先順位リストを用意させる等々 |
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リーダー・議長を決める | 自由平等に意見を言うのではなく、話し合いを統制する権限を一人に与え、全員が従うようにする。相続人以外の人に頼むのも有効。 |
話し合いの進め方を決める | 本題に入る前に、話し合いの進め方を決めておく。本題に入るまでの予備議題(相続の基本原則、財産目録・特別受益の確認、各相続人の生活事情や被相続人の遺志の共有など)、発言の順序や時間、禁反言・信義則の遵守といった議事運営のルールを決めて、全員が従うようにする。 |
注意すべき問題を共有する | たとえば不動産を何人かの共有名義にするのは後日トラブルの火種になることが多いので避ける、相続税の申告は10ヶ月以内、相続放棄は3ヶ月以内等々 |
本題に入る | 予め分割案の用意があればそれに沿って。優先順位リストがあれば高順位を優先して調整。各人が優先順位を公開しておいたほうが妥協案が生まれやすい |
書面にまとめる | 協議がまとまったら、その場で書面におこし、全員で確認のうえ署名捺印、印鑑証明書の添付をして完成させたい。後日の蒸し返しを防ぎ、名義変更手続きを迅速に進められる。そのためにも会場と時間の設定には留意したい |
原本と写し | できれば人数分の協議書を作成し、各自1通を保管したいが、相続人が多いと印鑑証明書を何枚も用意しなければないなど負担もリスクも大きい。特に全員が原本を必要でないならば、その場では原本1部のみを完成させ、後日全員に写しを送付することもできる。手続きに必要な人が原本を使用する。 |
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