具体的な相続内容を協議する−遺産分割協議−(その1)
遺産分割協議書とは
具体的な相続内容を決める協議を「遺産分割協議」、合意した内容を書面化したものを「遺産分割協議書」と呼びます。
遺産分割協議書は遺言書とならんで、相続による名義変更手続で大変重要な書類になります。そのため、遺産分割協議書は
- 相続人全員が記名し実印を押印をする(裁判の証拠としては署名のほうが無難。手続実務は印刷やゴム印による記名で可)
- 全員分の印鑑証明書を添付する
- これを相続人の人数分だけ作成し、各自1通を所持する
のが最もポピュラーな方法です。ただし相続人が何人も遠方に離れていて一堂に会することができない場合は、原本1通を郵送で順時回してゆく方法や、「遺産分割証明書」を利用することがあります。どの方法を選ぶかは、その後に行う名義変更手続きとの相性も考えて決めます。
遺産分割証明書と遺産分割協議書
なんとも紛らわしい名前です。遺産分割「証明書」とは、通常の「協議書」と同じ内容のものを人数分作成するところまでは同じですが、「この内容で遺産分割したことを証明します」と書き加えた上で1人1通に署名捺印し、その人の印鑑証明書を添付します。これを代表者(例えば登記手続きをする人)のところに全員分集めることで、遺産分割協議書の代用として相続登記に使えます。
基本は法定相続分、分け方は生活事情に合わせて
遺産分割については民法906条に規定があります。また判例で、法定相続分(または遺言で指定された相続分)に従うことが示唆されています。これは例えば、相続人が2人いるのに1人だけが全財産を相続するのは不平等だし、また農業をしている人が亡くなり相続人は3人、そのうち1人が農業を継ぐ場合なら、相続財産のうち農業機械や農地については農業を継ぐ者が相続するのが妥当だ、といった話です。
協議がまとまるなら、自由に決めても良い
しかし、上に示したルールは実務上は、相続人だけでは協議がまとまらず家庭裁判所の審判や調停に持ち込まれたときに適用されるに留まっています。相続人同士で合意(多数決ではなく、全員の合意です)できるのであれば、相続割合も、相続内容も(違法でない限り、ですが)自由に決めることができます。ただその際も、後々に不平等感がぶり返したりしないよう、法の趣旨に沿った分割内容を落としどころにするような決め方が良いでしょう。
全ての財産を一気に決めなくても良い
また、遺産分割協議は必ずしも全ての財産の分配を一度に決めなければならないわけではありません。生活や事業の継続のため急いで決めなければならない財産だけを先に合意して、その分だけの遺産分割協議書を作ることも有効です。ただ、相続税が発生する場合では納付期限の10ヶ月に間に合うように決めたいところです。間に合わない場合はひとまず法定相続割合での申告し、後日修正申告となります。
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